ザリガニやモグラではない人間は基本的に地表(地面の上)を移動している。目的地に向かってどんどん歩いて行って、川に出くわしたら板を渡す。それを橋と言う。山に出くわしたら穴を掘る。それをトンネルと言う。もっとも昨今、地表が混み合うので、わざわざ地下に潜り込んで掘り進んだトンネルも多いのが実状だろう。「トンネルはトンネルでも前者と後者では意味が違う」と、筆者は思うのである。どちらも便利のためのトンネルではあるが、前者の方がプリミティブ、歴史も古いし分かりやすいし正調。「あの山さ登って下りて、しんどいこった。真っ直ぐさ穴があったらどんだけ便利なこった。」‥‥‥‥‥‥港区の新橋地区と虎ノ門地区の間に、(何故またこんなところにと)こんもり愛宕山がそびえて(?)いる。山頂には愛宕神社とNHK博物館がある。その下に戦前(1930年)ぶっ通したのが今日のポラリ「愛宕トンネル」である。これもっとも都心にある正調トンネルではないだろうか。開通当日、新橋さんと虎ノ門さんは提灯をあげて祝ったそうだ。